主に江戸について

主に江戸後期の、主に庶民の暮らしを調べながら書いてます。堅苦しくなくポップ(?)に☆読んだ本のメモが中心。

江戸の人々は"大きな子ども"みたいで超かわいい =『逝きし世の面影』第2章より=

前回の記事に続いて、渡辺京二著『逝きし世の面影』より

 「第2章 陽気な人びと」。

 

この章だけでももう、

日本人観と江戸観が変わってしまうので

個人的に全日本人に読んでほしい!と思ってます。

 

なので、

私の考察というよりはただただ紹介することになる予感がします。

 

 

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0、よくある日本人観 / 江戸観

 

読み進める前に、よく言われる日本人観をいくつか挙げてみます。

 

ネガティブ寄りなものでは

・周りにあわせる

・世間体を気にする

・面白くもないのにヘラヘラ笑っている

・閉鎖的

・集団行動がすき

 

ポジティブなイメージでは

・手先が器用

・礼儀正しい

・仕事が丁寧

・真面目(すぎる)

・勤勉(すぎる)

 

といったものがあると思う。

 

 

翻って、江戸後期の庶民の暮らしについては

一般的にはどのような印象?

 

私の場合、あまり印象といった印象はなかったのだが

農民は貧しくて大変、町民は活気があったのかな、という感じ。

 

年貢をとりたてられて貧しさに困窮する農民、

飢饉や疫病にくるしむ人々、

鎖国していて閉鎖的、

元禄文化や化政文化といわれる

町人の文化が花開いた、

 

と、教科書とか歴史ドラマとかで受ける印象は

こんなところだと思います。

 

一般的に「ビバ明治維新!」みたいな雰囲気で

江戸の暮らしについてその素晴らしさを伝えているものは

極端に少ないと感じています。

 

 

 

  

1、幸福な人々

 

 

江戸後期〜明治初期において、

日本を訪れた欧米人がまず最初に抱いたのは、

「この国民はたしかに満足しており幸福である」という印象

だったらしい。

 

以下、彼らの記述を抜き出して紹介します。

 

日本人はいろいろな欠点をもっているとはいえ、

幸福で気さくな、不満のない国民であるように思われる

 

by オールコック

 

 

誰の顔にも陽気な性格の特徴である幸福感、満足感、

そして機嫌のよさがありありと現れていて、

その場所の雰囲気にピッタリと融けあう。

 

彼らは何か目新しく素敵な眺めに出会うか、

森や野原で物珍しいものを見つけてじっと感心して眺めている時以外は、

絶えず喋り続け、笑いこけている。

 

by ヘンリー・パーマー

 

 

この民族は笑い上戸で心の底まで陽気である。

by ボーヴォワル

 

 

ひとつの事実がたちどころに明白になる。

つまり上機嫌な様子がゆきわたっているのだ。

群衆のあいだでこれほど目につくことはない。

 

彼らは明らかに世の中の苦労をあまり気にしていないのだ。

彼らは生活のきびしい現実に対して、

ヨーロッパ人ほど敏感ではないらしい。

西洋の都会の群衆によく見かける

心労にひしがれた顔つきなど全く見られない。

 

頭をまるめた老婆からきゃっきゃっと笑っている赤児にいたるまで、

彼ら群衆はにこやかに満ち足りている。

彼ら老若男女を見ていると、

世の中には悲哀など存在しないかに思われてくる。

 

by ディクソン

 

 

なんと幸福そうな人たちであろう。

 

・・・幸福?

 

満足

陽気

笑い上戸

 

なんて、現代の日本人の様子と

かけ離れているんだろう・・・と思ってしまう。

 

電車や道ゆく人々の顔の

なんとムッツリしていることか・・・と。

 

 

驚くことに、外見上とても貧しいと見える

最下層の庶民にも、このような幸せそうな様子が見てとれた、

ということ。

 

 

  

 

2、礼儀正しく親切で愛想の良い人々

 

 

彼らの無邪気、率直な親切、

むきだしだが不快ではない好奇心、

自分で楽しんだり、人を楽しませようとする愉快な意志は、

われわれを気持ちよくした。

 

一方婦人の美しい作法や陽気さには魅力があった。

 

さらに、通りがかりに休もうとする外国人は

ほとんど例外なく歓待され、『おはよう』という気持のよい挨拶を受けた。

この挨拶は道で会う人、野良で働く人、

あるいは村民からたえず受けるものだった。

 

by ブラック 

 

 

農家の玄関先に立ち寄った際に

その家の子どもがすぐにあわてて火鉢を持ってきてくれた

 

とか

 

農村を歩き回っていると、

人々に招き入れられ庭の一番美しい花を切り取って持たせてくれた、

しかも絶対に代金を受け取ろうとしなかった

 

とか

 

暑がっていたら、子どもが

1時間もずっとうちわであおいでくれた

 

とか、数々のエピソードが挙げられています。

 

このような、無償の親切というのは

人々の特質だったらしい。

 

 

 

 

3、大きな子ども

 

 

そして、江戸の庶民は「大きな子ども」と

欧米人の目にうつった、ということ。

 

実際、大人は

凧あげ、コマまわし、羽根つき、といった遊びや、

話を聞いたり、歌を歌ったりすることを

子どもと一緒に、子どものように楽しんでいたんだとか!

 

それは欧米人にはとても滑稽だったらしいです。

 

 

そこには、ただ喜びと陽気があるばかり。

笑いはいつも人を魅惑するが、

こんな場合の日本人の笑いは、

ほかのどこで聞かれる笑い声よりも、いいものだ。

 

彼らは非常に情愛深く親切な性質で、

そういった善良な人々は、自分ら同様、

他人が遊びを楽しむのを見てもうれしがる。

 

by ブラック

 

 

子どものような無邪気さ、天心爛漫さ、

自らが楽しみ、他人も楽しませようとする性質。

 

なんという愛すべき人々・・・

 

"大きな子ども"という表現には

必ずしもポジティブな意味だけが含まれているわけではないらしいけれど

(好奇心がむきだしだったりで「子どもじみている」ということもある)

 

でも、いいな、と思ってしまいます。

 

大きな子ども!

 

 

 

 

4、まとめ

 

 

江戸は300年近くもの間

平和を維持した世界的にも希有な時代ですが、

もちろん、この時代の暮らしに

悲しみや苦しみがなかった、ということはあり得ません。

 

あり得ないどころか、

飢饉、天災、疫病、貧困、年貢のとりたて・・・等

挙げればきりがなく、

それは現代の比ではない程かもしれない。

 

そのような環境で、

幸福で、親切で、礼儀正しく、

子どものように無邪気に楽しく暮らしていたのは

なぜなのだろう?

 

 

実際、この章の中にも

洪水という大災害の直後でも、人々は落ち着いて幸せそうに見えた

という記述が紹介されています。

 

 

不幸を含めた暮らし丸ごとを

受け入れて楽しんでしまう、江戸庶民の特質。

 

 

前回の記事で触れた「自虐的ユーモア」もその1つと思うし、

 

とにかく、江戸後期には

人生を楽しくするヒントが隠されているような

気がするんです。

 

 

 

そして、それは確実に

私たち日本人のDNAに刻み込まれているものであり、

 

私はそれを少しでも現代に取り入れてみたい、

 

などと思っています。

 

 

自殺者が3万人を超えるという今の日本の社会・・・ 

 

社会を変える?

いや、そんな大したことは私にはできないだろうけど

少なくとも、私は、自分と周りの人たちが

楽しく過ごせる環境を模索していきたい。

 

そのヒントが江戸にある気がします。

 

 

だってさ、単純に

みんな"大きな子ども"だったら超楽しいよね!

とか思うんだけど。

 

 

どうでしょう。

 

 

 

 

最後に、

ほぼ引用しただけの記事になってしまったけど・・・

 

まぁ、いいよね。

 

これ以上の余計な言葉は不要と思って。

 

ここには挙げきれないくらい、

素晴らしいエピソードが書かれているので

ぜひこの章だけでも読んでほしいです!

 

 

 

 

 

もう、なんて愛らしいなんだろう。

超かわいい、江戸のひとびと。

 

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